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「お兄さん、お兄さん、大丈夫?」
遠くで声がする。
サタンは意識を取り戻した。目を半分だけあける。体は再び重くなっていた。眠りの時間は長かったように感じたが日が高いにも関わらず、未だに肌にも水滴がついていることを考えると、さほど経っていないのだろう。
「よかった、死んじゃったかと思ったよ」
顔を覗き込むように横に座っている少年はサタンが意識を取り戻したことに安堵していた。
この少年の顔はどこかで見たことがある。依頼書の少年、名前は確か...
「タケル…会いたかった」
サタンはタケルのほほに手を伸ばす。
タケルは困惑した表情になった、なぜこの男は自分の名前を知っているのかと
「えっ、そうだけど」
サタンの体の自由がきくようになって服を絞り乾かしながら、これまでのいきさつを話した。
「そっか、本当にサンタさんに願いが届いたんだね。待っていたんだよ」
タケルは笑った。
「その湖のそこにいるのは、クラーケンの一種だよ。いつからいるのか分からない、どこから来たのかも分からない。ただ数年前から、この辺りを通ったはずの人が行方不明になっているんだ。僕の願いはただ一つ、あいつを倒してほしいんだ」
「やってみるよ…」
サタンはタケルのまっすぐな瞳に負けた。あんな怪物みたいなのに勝てるわけがない、第一泳げないんだ。言いたいことは山ほどあったが言葉として発することはなかった。
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