サンタと森

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それからはタケルから情報を聞かされていた。 彼はこの先の小さな町に住んでいて、幼いころからこのあたりで友人たちと狩りを楽しんでいた。 ある日、弟が体調不良で寝込み看病をするため狩りに出向かなかった日から友人たちと連絡が取れなくなってしまった。最初は神隠しではないかと騒がれたが、友人たちを探しに行った大人たちが帰ってくることはなく森には近づくなということだけが町に広まった。 タケルは消えたということが信じられなくて、大人の目を盗んで森に入ったところたまたまタコの足が水面上に現れたのを目撃した。犯人はあのタコに違いがないと隠れて観察を続けたのが数か月前の話だという。 例え町の人々を襲った犯人がタコだとしても、たった数十秒で自分は死にかけた。数ヶ月前に湖に引きずり込まれた人間がいきている可能性はゼロであろうということをサタンは口に出せないでいた。 タコは昼夜問わず、一時間に一回ほど足を外に出すという。それがなんのためかはわからないが。 もうすぐサタンが気を失ってから40分くらいは経つと少年はいう。 あのタコを倒すとならば、急いで準備をしなくては。 少年は昔狩りが盛んにおこなわれていた時に仮眠用に建てられたという小さな家へと案内した。 弓、銃、剣まで武器ならよりどりみどりだった。戦うならば身軽がいいだろうが、体力を考えると接近戦は厳しいかもしれない。 服は乾かしていたため下着姿だったサタンは腰にベルトを巻き短剣を刺した。左手に銃をかまえる。この格好は夢を届けるサンタというより、今から犯罪を起こしそうなドリームクラッシャーに近い。 少年はあらゆる武器から弓だけを選んだ。狩りをするときはいつも弓だったから一番しっくりくるのだという。
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