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高層ビルの森には似つかわない、広大な土地に一軒の大きな家。午前中に訪れた木々の森の小屋が108個は余裕で入るだろう。その家の外壁を目前にサタンは立っていた。
依頼書にはありがたいことに少年の住む家の住所が書かれていた。部屋の位置まで。探す手間が省けたのだが、どうやって部屋を訪れようかと頭を悩ましていた。
見つめていた地面に動く影があった。
サタンは驚き顔をあげる。
そこには、アスランがいた。
「なにしてるの、おじさん」
アスランが声をかける
「お、おじさんじゃないです…サンタです」
「ごめん、サンタさん。もうちょっと声張って。上がってこれないの?待ってて」
なぜかアスランは笑っていながら窓から顔を引っ込めた。
そして顔の変わりにロープが振ってきた。
「どうぞ」
アスランが気を利かせてくれたのだろう。
サタンはその行為に甘えた。
思いっきり体を伸ばしロープをつかみ、足で挟む。
しかし、重力に負け滑り落ちる。アスランが再び顔を出しこちらを見ていた。
「サンタさん、外壁のくぼみつかって」
何度も何度も登ってはすべり、滑っては登りを繰り返し、最後はアスランに引き上げてもらった。
「ふぅー、なんかおじさんサンタさんって感じじゃないね。煙突から降ってきたらけがしそうだよ」
と終始笑っていた。
「あ、ボールお届けに来ました」
そういってサタンはボールを取り出した。
サッカーボールではなくボールを
サンタの世界では、プレゼントはポケットマネーから購入する。マネーは全てタブレットで管理されており、報酬もそこに入る。終えたのが今朝の任務一個だけのサタンにはサッカーボールを買う余裕がなかった。サッカーボールは毎年人気商品で値段が高騰するのだ。
「その、ごめんなさい。お金が…」
「アハハ、流石。いいよ、ボールがあれば十分。ありがとう。後は出世払いで今度はサッカーボール届けてね」
こうしてアスランの優しさにより無事に任務完了した。
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