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「あ!あのもう一着着てもらいたいものがあります」
部屋を出て行き、戻ってきたリズの手には服が乗っていた。
「これならきっと似合いますよー、着替えたらさっきの所に戻ってきてくださいね」
落ち込んでいるサタンに服を無理矢理持たせ、再び部屋を出た。
元の場所では老人、リズ、そしてもう一人の話声が聞こえた。サタンは言われるがままに着替えたが人に見せるのは気乗りがしない。リズに気を使わせてしまったことが枷になっているのだ。また似合っていなかったらどうしよう、やはり自分に働くことは早かったのではないか。そんな思いが脳をよぎっていた。
「あ、サタンさん」
リズは柱に隠れているサタンを見つけた。眉間のしわは取れ満開の笑顔でこちらを向いている。サタンはその笑顔に惹きつけられ彼女達の方へ歩み寄った。その場の全員が彼を見ていた。スタンダードなサンタ衣装と同じ型紙で作られた真っ白な服により全身真っ白になっていた。鮮血のような赤髪、同じ色の瞳を除けばだが。
「では、お仕事頑張って下さいね」
リズは小さなタブレットをサタンに渡した。
「このタブレットで依頼を確認できます。任務地までは私達の作るゲートを使って下さい。本来ならば、町中に開かれたゲートを探すところからやってもらうんですが、今日は特別です。アイっ」
「ほーい」
呼ばれたアイという少女はリズの隣にやってきた。先ほど老人やリズと会話をしていた少女だ。アイもリズ同様、色が様々に変わる肩までの髪を持っている少年のような中性的な少女だった。
二人は手を握り祈りを始めた。
すると空間の一部にヒビが入ったかと思うとそのヒビの被害は広がり、一枚の大きなカーテンのようになった。
「いってらっしゃい」
二人の声を背にカーテンをくぐった。
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