サンタと森

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恐らく、どこかの森の一部なのだろう。木の終わりが見えない。 とりあえず道であろう、辺りとは異なり草がしなれてるところを歩いていた。この道ならざるものがあるならば、誰かがこの道を歩いていたのだと思ったからだ。 外の空気を吸うのは久しぶりのことだった。もちろん、人工的でないものにふれるのも。 以前のことを思い出していた。 正方形の空間。中央の寝台にサタンは寝ていた。いや、寝ていたというより寝かされていたという表現が正しいのだろう。両手首、両足首、肋骨の位置で拘束をされていたため動くことができなかったのである。もちろん時計がなかったため時間の流れは分からなかったが、たまに栄養チューブの交換にくる人がいた。 どれほど拘束されているのかも分からない、いつまで拘束されているのかも分からない無の時間だった。 ずいぶんと歩いている。木々の間隔が狭まり森は影を増していく。足が重い、一歩を出すのに時間がかかるようになった。呼吸が浅くなり回数が増えていた、確実に体力が削られている。 長年、動いていなかった影響だ。お腹も空いた、喉が渇いている。しかし、タブレット以外の手持ちはない。 ともかく体だけでも休めようと考えた時、一兎のうさぎと目があった。こちらの様子を伺っているのだろう、木から顔だけを出しまるで置物のように微動にしなかった。 うさぎ、カーテンを越えてから初めて動物を見た。 最初より木々がイキイキしている、動物が生活している。 近くに水源があるはずと思うと足が軽くなった。 少し歩くと、想像通り水源がそこにあった。
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