サンタと森

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淡い空の様な色の大きな湖があった。 木々が周りを囲み柔らかな光が差し、水がキラキラと反射していた。 周りにはたくさんの動物がいた。先ほど見たうさぎの仲間たちが日差しを浴びながらお昼寝をしていた。シカの親子は並んで水を飲んでいた。近くの木の枝には小鳥がとまり、唄を歌っていた。 正午にはまだ早いが、日はてっぺん近くまで来ていて穏やかな時間が流れていた。 休憩しよう、湖に近づきそっと手で水に触れた。火照った体に気持ちいい冷たい刺激が走る。スッと体の力が抜けた。ならないことだらけでいつの間にか体が強張っていたのだろう。 シカの親子が水面の新たな揺れに気づき口を離し、こちらをじっと見た。 「ご、ごめんなさい…」 サタンは自分のできる最大の笑顔でそちらを見たが、うまく笑えたのだろうか。顔が引きつっている気がする。笑顔は苦手の1つなのだ。 しかし、そんなサタンを気に留めずシカの親子は再び水を飲み始めた。シカの親子にとって大したことではなかったのだろう。ただ、変化に驚いただけ。彼を受け入れることも拒否することもない。 水をすくい口元へと運ぶ。口の中に冷たさを感じたかと思うと、喉にお腹に冷たさが広がった。水の流れを感じることができた。それがどこにでもある水でも、少し濁った水でも今の彼にとっては美味しいものだったのだろう。何回も何回も手を動かした。 そうしてお腹が水で満たされたころ、ブーツを脱ぎ今度は足を湖に入れた。バタ足をして水面に泡を立たせて遊んだ。 先ほどまでの疲れが嘘の様に心軽やかになっていた。
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