クリスマスの奇跡

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「今日営業の佐伯さんとデートなんです」 それが彼女が私に発した第一声だった。 「…7時までに行かなくちゃいけないのに部長に仕事頼まれちゃって。倉田さん今日どうせイブなのに予定ないでしょう?」 そう言った彼女はにっこりと笑った。 「部長ったら。自分は家に帰ったら待っている奥さんがいるくせに、こんなに仕事を預けて私をデートに行かせたくないんです。嫌になっちゃいますよね」 …そう言って愛らしく笑う彼女と部長の不倫関係は、たまたま忘れ物を取りにきたその日に部長と彼女の濃厚なキスシーンを目撃したことにより知ってしまった。 大人の男の色気があり仕事も出来る部長は皆の憧れで、 私もそんな部長に憧れていた一人だった。 …その日、そのシーンを目撃した瞬間に部長も普通の男の人だったんだなと妙に納得して。憧れていた気持ちが冷めていくのを感じた。 デスクの中に忘れていたケータイを諦めたまま帰宅して、忘れようとその日は布団を被って寝てしまったのだけれど、彼女はあざとく見ていたのだ。 …猛烈なキスの中、ドアの前で固まる私を…
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