クリスマスの奇跡

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…その日から、彼女の悪質な嫌がらせが始まった。 自分が秘密を握られているにもかかわらず、私に嫌がらせをしてくるのを不思議に思うんだけど…。意地悪を苦に私に部長との不倫をバラされたら、彼女はどうするつもりなんだろう? 誰か彼女の思考回路を解説してほしい。 仕事を終わらせ帰宅する間際に自分の仕事を押し付けてきて、自分の手柄にするのはいつもの事で… 彼女は私の周りにいる人を自分の味方に引き込んで、私の悪い印象を植え付ける悪い癖がある。 そして、入りたての頃に此方の部署で私が教育係をしていた後輩が今日の彼女のデート相手だ。 …銀のフレームの眼鏡にかかるサラサラの猫毛。何かを失敗して私に助けを求める時の、微かに不安が滲んだ声。 同じ部署の人たちに嫌われてもなんとか耐えてきたのに、子犬のように後ろをくっついてきて屈託なく笑っていた彼に嫌われるのは少し寂しいと思った。 けれど… 私が身近な人に嫌われて傷つくのを見るのが彼女の目的なのだから、負けたくはない。 「…じゃあ、コレ明日までだから。ちゃんとやっておいてね。…あぁ、時間に遅れちゃう。じゃあね」 ドアから出て行った彼女のカツカツと廊下を走るヒールの音が響く。 目の前の山と積まれた資料を見ると、項垂れた。
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