エルサルバドル

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* 『代わりに二月あたりにバカンスが取れそうです。雪の温泉に行きたい。遥もその時に休暇が取れるよう、調整よろしく』  帰宅してすぐのメールチェックが日課になってもうすぐ一年になる。  メールは毎日。けれど電話は滅多にしない。  必要以上に感情的になってしまうからだ。  いいようにも、悪いようにも。情熱的にも、自棄的にも。  ちょうど去年の今頃だった。  その日、私は翌月から通いはじめることにしたお料理教室の一年分の月謝を払い込んだばかりで、潤からエルサルバドルへの転勤が決まったと神妙な顔つきで言われた時も教室用のエプロンを新調しようなどと考えていたところだった。  行きつけのお店で、彼は私にいつの間に用意したのか指輪を差し出して一緒に来て欲しいと言った。  最低三年、それ以上になるかもしれないからと。  交際期間は四年に及んでいたし、お互い結婚するつもりでいたので、ごく当然な流れだったのかもしれない。  バーの暗い照明に、まばゆく輝くダイヤモンドを前にして、私が考えていたのはあろうことか前納した月謝のことだった。 (いかなる理由であれ返金はしませんって書いてあったよなぁ)  マンションの賃貸契約の更新を先月したばかりだとか、再来月の友達の結婚式でスピーチを頼まれているのになどと、半ばどうでもいいことが次々と頭をよぎる。  仕事のことも考えた。
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