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感情を抑える私をよそに、困り顔で瑞希お兄ちゃんは言う。
「隠さなくていいだぜ?殴られてるの見んだぞ?」
「え!?見てたんですか!?」
「正確には、『見えた』だ。それで急いで走ってきた。」
(そうだったんだ・・・)
「だからさ、警戒しなくていいから。俺は、君にひどいことをする気はない。歩けそうにないなら、送ってやるから。」
「え!?送ってやるって・・・・!?」
(それはつまり、瑞希お兄ちゃんが私の家に来てくれるってこと!?)
嬉しい!
喜びでテンションが上がる。
(でも・・・・)
嬉しいけど・・・
(今の私は、凛道蓮じゃない。菅原凛。)
男の子を演じられても、瑞希お兄ちゃんの前で菅原凛でいられる保証はない。
そう思い直すと、首を横に振る。
「1人で、帰れます・・・」
「え?1人で帰れるのか?」
瑞希お兄ちゃんの問いに、首を縦に振って答える。
本当は送ってほしいよ。
せっかく会えたから、もっといたいよ。
でも・・・できない。
(瑞希お兄ちゃんを狙う田渕の目があるなら・・・ここは遠慮した方がいい。)
か弱い私を人質に!もあり得るから。
〔★どちらかといえば、したたかだ★〕
理性と感情のはざまで戦う私を、側にいるヤンキーガールがさらに迷わせる。
「おい、お前!遠慮してねぇーで、甘えちまえよ。渕上共が待ち伏せしてる可能性あるんだぞ?ウザくても有名だからさ~?」
「え!?そうなんですか・・・?」
「そうだよ。お前、同じ学校なのに知らないのかー?つーか、渕上が学校サボってれば、お前みたいな真面目ちゃんが知るはずねぇか?」
「はい・・・」
本来ならそんな話、聞きたくないけど・・・
〔★必要な情報だった★〕
そんな話を聞いたら、1人の帰宅がゆううつになる。
頭痛を覚える私に、カンナさんは話を続ける。
「あ~!渕上の馬鹿を思い出したら、ムカついてきたぜ!おい、男の真田先輩が嫌なら、あたしが送ってやろうか!?ついでに渕上を、ぶっ飛ばしてやるぜ!?」
(それは、いい考えではありますが・・・)
「よせ、高千穂。それだと逆に、渕上って奴と同じ学校に通ってるこの子の今後の学校生活が面倒くさくなるだけだ。」
「あ、それもそーすか?」
(そうだよ、カンナさん・・・)
〔★今後を左右する下校になる★〕
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