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「さてと・・・」
キャップ帽子をかぶり直しながら、瑞希お兄ちゃんがつぶやく。
「いつまでも、ここにいたらダメだ。送ってくわ。」
「え!?い、いいです・・・!」
慌てて、顔を下に向けながら断る。
「念のためだよ。『渕上のるあ』らしい小娘の話は、俺も聞いたことある。」
「『るのあ』です・・・」
「え?まぁ、どっちでもいいじゃんか!その片淵が、待ち伏せしてるかもしれねぇーからさ?」
「あの、渕上です。」
「はははは!じゃあ、送ろうか?」
(あれ?スルー?)
〔★瑞希は修正することをやめた★〕
「片淵だか、るるあだかしらねぇーが、集団で良い気になってる奴は気に入らねぇ。特に、人を見た目で判断する奴はだ・・・・!!」
(見た目・・・)
笑顔で怒っている瑞希お兄ちゃんを見て思う。
やっぱり、女の子扱いされたのが、そうとう嫌だったのかな・・・と。
〔★完全にそうだ★〕
「ほら、いじめっ子のことは忘れて、自分のことだ。ほら、家はどこ?」
「い、いえ!本当にいいんです・・・!」
気を取り直しながら言う瑞希お兄ちゃんに、何度も首を横に振る。
嬉しかったけど、こっちはバレないかと内心冷や冷やしてる。
「助けて頂いただけで、十分です!だから、私のことはもう・・・」
下を向いたまま、手を大きく横に振ったら―――――――
ズキン!
「うっ!?」
腰へ、にぶい痛みが走った。
思わず、痛みがした場所を抑える。
「おい!?どうしたんだ!?」
「ちょ、ちょっと急に・・・」
「あ!?そういや、あいつらに踏まれてたな!?」
「それも見てたんですか!?」
「見えたんだって!あ、よく見れば、顔も・・・ちょっと腫れてるな?」
スっと頬に手を添えられる。
(だ、だめ!ふりほどかないと~!)
「あれ?彼女、なんか・・・・・」
「っ・・・・!」
息のかかる距離まで瑞希お兄ちゃんの顔が来る。
悩ましい顔に、見惚れてしまう。
逃げることができない。
〔★瑞希の目力、凛は金縛りになった★〕
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