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再開
センター内を冷ややかな空気と共に僅かな音さえも許さぬ静寂が包む。
「(どうして黙っているんだろうこの人・・・やっぱり怒ってるのかな・・・。)」
「(うっわどうしようこの展開は予想だにしなかった・・・あれ?待てよなんで俺は
琴音が目の前にいるぐらいでこんなに動揺しているんだ?あんな夢を見たからか?)」
空調の音だけが室内に響き渡り、佐伯でさえも只ならぬ空気に言葉が出ない。
そんな時、その静寂をゆっくりと小さな声で断ち切ったのは琴音であった。
「あの、怒ってますよね・・・本当に申し訳ありませんでした・・・。
それであの、どうして貴方は私の番号を・・・?そして貴方は・・・?」
潤んだ目でこちらをじっと見つめる琴音に、凛は目を合わせようとしない。
「こ、この番号はですね・・・えっと実は・・・」
凛が全ての説明をしようとした瞬間、琴音のバッグから音声が鳴り響く。
プルルルル・・・プルルル・・・プルルル・・・
「あ、電話みたい・・・すみませんお話し中に、ちょっと失礼します。」
焦るようにわたわたとスマホを取り、立ち上がり少し離れて琴音は電話に出る。
「はいもしも・・・あ、内田君!?」
内田という苗字にふととある人物が思い当たる凛。
しかし凛はそんな極一般的な苗字どこにでもいる、そう思った。そう思いたかった。
「え?私の携番が書かれた紙?え、うん持ってたけど・・・。」
この瞬間、凛はもの凄く嫌な予感がした。通話相手が誰であるか悟ったからだ。
「え!?こ、この人りんりんなの!?」
その言葉を聞いたその直後、凛は琴音からスマホをひょいっと奪う。
慎太郎に聞こえぬように通話口をそっと手で塞ぎ琴音に耳元で囁くように語り掛ける。
「おう、俺は中村凛だよ、久しぶりだね、琴音・・・。」
そう聞いた途端琴音は涙が止まり真っ赤に赤面し凛から素早く遠ざかる。
「あ、うん、あの、ごめんね気づかなくてりんりん久しぶりだね・・・。
その、あの・・・りんりんか、かっこよくなったね・・・。」
「そうか?そりゃまぁ、あ、ありがとな。こ、琴音も可愛くなったんじゃないか・・?」
「そ、そうかな・・・ありがとう・・・。」
共に赤面する両者、思いがけない展開にほっこりしにこにことする佐伯。
「二人は知り合いだったのかい、それならよかったねえ・・・。」
いよいよ再開した二人、果たして今後どうなるのか・・・。
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