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鼓動
「こっちに帰って来てたんだな琴音、知らなかったよ。」
「え?知らなかったの?私ちゃんと美帆さんに言ったよ?聞いてない?」
「え、母さんが?あー・・・いや、忘れてた・・・ははっ・・・」
痛いところを突かれ戸惑う凛、正直琴音の話などまともに聞いてすらいなかった。
「忘れっぽいところは相変わらずなんだねりんりんは!」
「うるせーよ、琴音だって相変わらずちっこいままだろうが。」
「ひっどーーい!私これでも結構伸びたんだからね!」
たわいもない会話が続く中、突如凛の持つ琴音のスマホから声が響く。
〈おーーーーい!お前らの会話丸聞こえだしいつまで待たせんだボケェ!〉
電話の向こうで待ちくたびれた慎太郎が激昂する。
「うわやっべ忘れてた、ごめん琴音、ちょっと待っててくれ。これ少し借りるな。」
「あ、うん・・・いいよ。」
少しその場を離れ慎太郎と会話に入る凛。
「やっぱりお前だったか慎太郎・・・。図ったな?」
「おっとこれはびっくり琴音の携帯に凛ちゃんが出るとは!」
とぼける慎太郎にふつふつと凛は怒りを露にする。
「お前なぁ・・・好き放題勝手に喋りやがって・・・
さ、さっきだって本当は自分から名乗るはずだったのに・・・。」
後半になるにつれ小声になりもごもごと言葉詰まらせる。
「いやな?実はさっき琴音から人を殺しちゃったなんて泣きながら電話があってな?
いやー驚いた驚いた!相手は同じ大学の男子でしかも校内だなんていうから容姿とか
所持品聞いて凛ちゃんと重ねたらそれがもー見事にぴったり!いやぁやっぱり
運命とはあるもんですなあ!はっはっはっ!!あ、で、なんだっけ?」
「もういい・・・切るぞ。」
凛が吐き捨てるようにそういうと、慎太郎は小さく笑っていう。
「ふっ・・・まぁこれでそれなりに土台は整っただろ?
後はわだかまりを解くのもてめぇの気持ちに向き合うのも自分次第。
まぁ後は勝手にやれや凛ちゃん、こっから先は俺の知ったこっちゃないわ。」
「・・・ありがとな。」
「感謝されるようなことした覚えないわ。ま、上手いことやれ・・・じゃーな。」
そういうと、慎太郎は電話を切る。
「悪かったな琴音、お前宛の電話だったのにあいつ切っちまったわ。」
ゆっくりとスマホを琴音に返す凛。
時刻は15時を迎え、講義は4限へと進む。
そしてまた一人、保健センターへと向かう謎の影が・・・。
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