遥かなる時を越えて

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ハッと目を覚ますと、そこには見慣れた天井があった。ベッドの上だ。 「夢か・・・なんだ今の夢・・・やけにリアルというか・・・漫画の読みすぎか?」 男はぶつぶつ言いながらベッドから起き上がると階段を駆け下りリビングへと向かう。 この男の名は[中村 凛]、19歳の大学生だ。 特に夢も目標もなく、恋愛にも興味はないようだ。 凛がリビングに入ると、凛のお母さんが朝食を用意して待っていた。 「おはよう母さん。」 凛が挨拶をすると母は忙しそうに言う。 「おはよう凛、早く食べちゃいなさい。片付かないわ。」 言われるがまま凛が黙々と朝食を食べていると、 母が急に嬉しそうに思い出したように凛に声をかけた。 「そうそう!凛、あんた琴ちゃん!保育士目指し始めたんだって! 偉いわよねー・・・給料も安くて変わった保護者も最近は多いって聞くし 子どもが好きでも大変なお仕事よねー・・・琴ちゃん大丈夫かしら。」 琴音という名前が出た途端、凛は急に不機嫌な顔になる。 それもそのはず、いつも母が琴音の話ばかりをするからという理由に他ならない。 [円井 琴音] 凛の同級生であり、幼馴染の女子であるが、 琴音が中学で遠方へ引っ越して以降凛との直接的な関わりはないものの 両親同士が友人間であるため琴音の情報は逐一入ってくると同時に凛の情報も 円井一家には逐一伝わっている状況にある。 「(また琴音の話か・・・もう何年も会ってないのに興味もないわ・・・。)」 凛は最近はなるだけ琴音の話は軽く流し相槌程度で済ませている。 「また・・・琴ちゃん・・・こっち・・・らしいのよ・・・会いに・・・なの?」 「へぇ・・・・。琴音がね・・・。そうなんだ・・・。」 いつものように話もまともに聞かずに流して 早く終わらないかな、なんて考えていると凛は今朝の夢をふと急に思い出した。 「ねぇりんりん、わたしね、りんりんのことだいすき。              おっきくなったら、けっこんしようね!やくそく!」 引っかかったのは名前の呼び方、 りんりんと自分のことを呼んでいたのはそう、円井琴音だけだった。 「もしかしてあの子は・・・琴音・・・だったのか・・・?  俺は琴音と結婚の約束をしていた・・・のか・・・・?」 幼き頃に交わした忘れられた約束が・・・時空を越えて・・・また動き出す・・・
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