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厳しき優しさ
そういえば、愛犬の散歩に出ていたんだっけ・・・。
ずっと考え事をしていた、凛は公園の中を見つめる。
いつもの散歩コースではあるものの、公園に入ったことはなかった。
「ま、今日は大学も休みだし気分転換に入ってみるか・・・。」
凛が中に向かい手綱を引くと、愛犬のぽこは嬉しそうに中に走っていく。
「お、おい待てよぽこ・・・早いって・・・!」
どこまで行くんだと息も絶え絶えになってきたころ、目の前には大きな丘が見えた。
「この丘・・・まさか夢の・・・?」
凛は辺りを見渡す、しかしあんなアスレチックや大型遊具など記憶にはない。
「ここじゃないのか・・・?琴音と約束した場所は・・・。
いや、でもあれは所詮は夢の出来事、元々そんな約束していなかった可能性すらある。」
凛はぽことゆっくり丘を登り始めた。
やはり、見の覚えのある景色や夢で見た草原はなかった。
「気持ちいいな、ぽこ!」
ぽこの頭をなでながら歩き続け、凛は次第に疲れを感じたのか
丘を下り、公園内にあるベンチに腰掛けた。
「ふぅ・・・なんでこんなに琴音のことばかりが気がかりなんだ・・・。」
ベンチの背もたれに腕を置き、綺麗な空を仰ぐ凛。
「琴音は今どこで何してんのかな・・・。」
小さな声で凛がぼやくと、隣に座っていた青年が急に声を荒げた。
「琴音琴音ってうるせーなぁ!なあ!凛ちゃんよぉ!」
不意の大声に驚く凛、声の方向を見ると笑顔でこちらを向く一人の男の姿があった。
「し・・・慎太郎!?」
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