厳しき優しさ

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「し・・・慎太郎!?」 凛が驚いている間にすっと立ち上がり凛の前に立つ。 「よぉ、久しぶりだな凛ちゃん。中学卒業以来か?」 [内田慎太郎] 小学1年生の頃に凛や琴音と意気投合し仲良くなり、 それ以来行動を共にすることも多くなる。 琴音の引っ越しや中学卒業を境に次第に疎遠になる。今は社会人として働いている模様。 「何年ぶりだよもう、てかもう凛ちゃんって呼ぶのやめてくれよ。」 凛が恥ずかしそうにそういうと、慎太郎は笑った。 「ははっ!お前それは俺より先に琴音に言うべきだろ! 未だにりんりんとか中国のパンダみたいな呼び方してるあいつにさあ!」 この瞬間、凛は慎太郎の言葉に違和感を覚えた。 「未だに・・・?」 慎太郎は再び凛の横にドカッと座ると前を見たまま言う。 「ところで、凛ちゃん琴音琴音ってどうしたんだよ?あいつになんかあったのか?」 そう聞かれると、答えが出ない。夢を見たなんてとても言えなかった。 「いや・・・どうしてるのかなって思ってさ、もう随分会ってないし。」 「どうしてるも何も、お前親御さんから聞いてないのか・・・?あいつは・・・。」 何かを言いかけた瞬間、慎太郎は不敵な笑みを浮かべる。 「いや・・・やめとこ、知らねえならそれでいい。その代わりにこいつをやろう。」 慎太郎は着ていたパーカーのポケットからメモ帳とペンを取り出すと サラサラと何かを書き始める。 慎太郎の行動がまったく理解できない凛。 「慎太郎・・・さっき何を言いかけたんだ?そんでそれはなんだよ?」 凛が慎太郎の方を向いて問いただそうとすると、スッと腕が伸びてきた。 持っているメモ帳には携帯の電話番号のような文字が書かれている。 「これ誰の電番だよ、てか勝手に人の電番教えるなんてお前な・・・。」 凛が伸ばされた腕を慎太郎の胸に戻そうとする。 「あいつも相手がお前なら多分問題ないだろう、この電番の先に答えがある。 相手が誰であるかはお前自身で確かめてみろ。大丈夫、変な番号ではない。 あの時のことが絡んでいるなら、さっさと解決した方がいいんじゃないか?」 慎太郎の言っていることがまるで理解できない凛。 「どういう意味だよ・・・?」 「ま、後はうまいことやれ、じきに電話なんて必要なくなるだろうけどな・・・。」 そうとだけ言い残すと、慎太郎は静かに去っていく。 「なんなんだよ・・・?」
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