01 - 始まりの日

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「――俺でよければ、本当に、嬉しい」 「……本当に?」  不安に揺れる、私の言葉。 「もちろんだ!」  それを、一瞬で吹き飛ばす、ユキオの力強い言葉。  その言葉にようやく、胸の奥が、奇妙な暖かさに包まれて。 「これから、よろしくな。ミチ」  ――ミチ。ユキオに告白した、『私』。 「……うん」  受け入れてもらえた私も、柔らかく頷き返す。  にやけない自信なんて、私にも、ない。  想わず頬がゆるみ、微笑み。  恥ずかしさから、手で頬を押さえようとして……。 『――最初の関門突破、おめでとうございますぅ♪』  その時、だった。  耳元で、怪しく溶けるような声が、聞こえたのは。 「……っ!」  びくりと、肩を震わせて、左右を見回す。 「どうか、したのか?」  突然のことに驚いたのか、心配そうな彼。 「う、ううん! 嬉しすぎて……本当、うれしくて……」  目元を涙でにじませながら……嬉しいという言葉を、かみしめる。  ――少しだけ、苦みを誤魔化して。  ――胸の中でわき上がる、『自分』との違和感を。 「あっ、そろそろみんな来るな」  時計を見て、急いで準備を整える彼。 「また、後でな」 「うん。また、後で」  そう答え返すと同時、彼は大急ぎでグラウンドへ。  私もまた、他の男子生徒に挨拶をしながら、今日の仕事をするため部室を抜け出す。  ――誰にも、『自分』の変身を気づかれていないことに、安堵し。 『さぁ、続けましょうかぁ? この、幸せな一時をねぇ』  ――私にしか、聞こえない。  ――悪魔の笑いへ、苦味を感じながら。
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