序章――願望――

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ここは……どこだ?? 見覚えのある部屋の入り口に俺は立っていた。部屋と言っても中は4畳の広さがあるかないか程のこじんまりしたもの。壁は石壁でものがいろいろあって狭さが更に強調されている。 あ、そうか。ここは俺が働いている店の従業員控室か……ってちょっと待て。 いつ俺はここに来たんだ??いや、無論今日がバイトの日だということはわかっているのだが……ここに来るまでの通勤時間(およそ1時間)の記憶が全くない。 なるほど、確か昨日寝不足だったな。バスの中で爆睡でもしていて覚えていないだけだろう。 しかし…… この従業員控室に今まで見たことのない人間がいるのだ。歳は、俺と同じぐらいだろうか。肩口までしかないショートヘアに頭の上の両端をリボンで軽くツインテールにしている。 女だ―― しかも何故か彼女――部屋の隅で床に座っているのだ。部屋の中には椅子だってあるのに……不思議だ。 その手前に男が一人椅子に座っていた。こっちは見たことがある。同じバイトの男の先輩だ。 と、いきなりその先輩が隅に座っている彼女に抱きついたのだ――っておい!! いかん、見てはいけないものを見てしまった。 俺はそそくさと退散しようと足を……動かない?? ふいにどさっという音が耳に入ってきた。見ると男の先輩が床に倒れていたのだ。 あの女、先輩を倒したのか――!? しかも今、彼女と目が合ってる。すっごい気まずいんだが何故か俺の体は彼女から目を反らさない。 俺の体が、勝手に動き出した。ってちょっと待て、本気でやばいって!! しかし直も足は進み、部屋の中に入り――彼女の前に座り――彼女を、抱き締めた。 ――!? 声にならない声があがる。筈なのに何も聞こえない。それどころか全く別の言葉が俺の口から出てきた。 「――」 俺が言った言葉の筈なのに何故か何を言ったのかわからない……あー、なんかオチが読めた気がする。 つまり、今のこれは―― 突然、俺は彼女にキスをした。 ……あれ?? 俺は、一体……
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