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「ねえ、神様って孤独だったのかな」
ニアはノートに走らせるリズミカルな音を途絶えさせ語り掛ける。
過去にも似た言葉を聞いたレイティアは同じ答えをかえした。
「宗教における神は孤独など感じてはいないと私は判断しますが」
「でも世界を創り、動植物を創り、人を創ったのでしょう? それは寂しかったからじゃないのかな。寂しくないのなら、ずっと独りで居られる筈よ。それに好きだとか、嫌いだとかの感情だって、知らなければ教えれないでしょ」
先程の騒ぎを起こした、男と子供の言葉を覚えていたのか。
会話の内容は飛躍する。
「レイティア、貴女も孤独を感じないの」
興味に見開かれた瞳が、細められる。
月の満ち欠けの如く、直ぐに変わってしまう表情。
微笑を顔に乗せたまま、機械の人レイティアは応えの為に演算を繰り返す。
「貴女が心と感じるものは有るでしょう。ですが、私達の仕組みと貴女方の仕組みは違います」
チューリング・テストのデータが瞬きよりも速く過ぎ去って行ったが、今はそれを説明する必要はないと判断した。
結局は、観測者の主観で変化してしまう問題に、正しい解は無い。
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