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中には殴られても簡単に傷付きそうもないタイプも居たが、今は静観の姿勢を崩さない。
暴力を無理に抑え込もうとしないで、男の不満を受け入れる事で解決を図ろうとしているのだ。いきなり暴力を振るい出すハイブリッド種に、この手は有効だった。
男は何度もボディの柔らかなレイティアを殴り続け、汚い罵りの言葉を喚いていたが、やがて腕の動きも声も止めて地面にへたり込んだ。
ハイブリッド特有の巨体が、一気に小さくなったみたいだった。
周りの空気を焦がす怒りの気配も消え去り、男の目には落胆の色が浮かぶ。
彼の前には機能を失い、ただの鉄屑と化したレイティア。
ガラスの瞳に灯っていた光は、既に消えている。
そこに、新たに一機の機械の人が近付く。
「気が済みましたか?」
「……アンタか」
重そうに頭を上げた男は鉄屑と化したレイティアを見てから、新しく目の前に立った機械の人を見て呟いた。
「……同じヤツ何だろ?」
「良く、解りましたね」
レイティアは怒りに身を任せて行動する、短慮としか判断しなかった男を見直す。
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