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「ぼくもよくは知らない。でも神様は機械の人とおなじで、どこにでも居ていつもみんなを見まもっているって」
紡がれる偽りの無い言葉。
「うん、そうだな。……ゴメンな、怖かったろ」
ずっと男の顔を見ていた子供は、母親を見上げると肩を掴む手をそっと引き剥がした。子供が何をしたいのか分かったのだろう、母親は引き留めもしないで簡単に手を離す。
警戒心もなく男に近寄ると、子供はその大きな身体に全身でしがみ付いた。
「ぼく怖くないよ。お兄ちゃんはさみしくないね」
小さな胸に男の頭を抱えて、母親がしてくれる様に小さな手で優しく撫でる。
「……うん、有難う」
「ぼくも、お兄ちゃんみたいに大きくなれる?」
自分が異種交配の子供だと知っているからこその言葉なのだろうか、それとも憧れからの言葉なのだろうか。無邪気な声に、男の目尻には涙が浮かぶ。
ハイブリッドは、両方の親から良い部分を引き継いで身体も大きくなり易い。恵まれた体格も体力も知能も、全て一代限りで終わる命の為に用意されたものだと、この世界では祝福もされていた。
無言で子供に頭を撫でられながら、男は頷く事が出来ずにぎこちない笑みを再び浮かべる。
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