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「もう大丈夫だ、寂しくないよ。お母さんの所に戻りな」
ゆっくりと立ち上がり、子供の背をそっと押すと、隣で経緯を見守っていたレイティアに向き直った。既に破壊された旧い身体は回収がなされている。
「どいつに付いて行けば良い」
自分から更生施設に入ると認めた言葉だった。
「レギンに」
短い応えと共に近寄って来る頑丈なタイプ。
叩いた所でへこみも、傷一つも付きそうにない身体は男を超える程に大きい。
「……なあ、一つ聞きたい」
歩みを進める前に、我が子を全身で抱き留める母親に声を掛ける。
「その子を授かって、アンタは幸せだったか」
顔を上げた母親は柔らかに受け答えた。不安など欠片も浮かべない表情で。
「今も幸せですよ。私の夢は、孫をこの腕に抱くことです」
「オレ達は次世代を授かれないのにか」
「その為の研究を夫は続けています。私も、子育てが一段落したら同じ研究をします」
希望を捨てない者の言葉は、男の目を大きく開かせた。
「オレも……同じ夢を追えるだろうか」
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