1日目(教室20)

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1日目(教室20)

「みなさんおはようございます」  どこからともなく聞こえる男の声により、机にうつ伏せの状態で寝ていた20人の生徒は一斉に目が覚めていた。  実際は体に微弱な電流が流されていたのだが、この時はまだ誰も気づいてはいなかった。  自分たちの首と両手首、両手足に装着された5つのリングを指先でなぞり、その感触を確かめていた。 「・・・・・・なにこれ」  生徒の中で最初に口を開いたのが中条ゆきだった。際立った個性があるわけではなく、周囲に流されやすい、ありふれた女子高生である。  言葉を発した瞬間、手首に装着されたリングに電流が走った。中条は悲鳴すら出せないほどのショックに悶絶し体を震わせた。  数人の生徒は椅子から立ち上がって中条の様子を、口を半開きにして観察していた。 「こんな風にビリビリしたくなければ、私語は慎んでください」 「私が許可した時だけ、君たちは喋ることができます」 「どうしてこんな所にいるのか不思議に感じるでしょ?」 「拉致ですよ、拉致」  生徒たちは室内を見渡した。  見覚えのある顔ばかりだった。  男子10人、女子10人。ガラスでできた透明な机は縦に5列、横に4列あり、床に固定されていた。  生徒は全員囚人服を着せられ、胸と背中には番号と名前が縫い込まれていた。  スピーカーはどこにもなく、生徒たちは声がどこから聞こえてくるのか見当もつかないでいた。
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