1日目(教室20)

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 一番後ろの席に座っていた佐々木祐介はおもむろに立ち上がると、自分の座っていた椅子を両手で掴んで頭上に持ち上げ、「ふざけんな!」と叫びながら渾身の力でガラスの壁を叩いた。空手部に所属しているため力には自信があった。  しかしガラスは割れるどころか傷一つ付かず、衝突音すらしないまま椅子を跳ね返していた。 「はいはい、元気ですね。5番(佐々木祐介)の方。栄養ドリンクのCMのオーディション受けたほうがいいですよ。ではレベル3の電流を流しますね。これは壁を叩いたことに対するペナルティーじゃないです。言葉を喋ったことに対する罰です」  教室中の生徒の視線が一点に集まった。  佐々木は呆然としながら、その場に立ち尽くしていた。たった一度椅子をぶつけただけで、このガラスは絶対に人間の力では割ることができないことを、手のひらに残ったシビレが伝えていた。  電流が流れた瞬間、佐々木の体は直立したまま硬直し、受け身を取らずに倒れた。数人の女子生徒が悲鳴を上げて、すぐに自分の口を手でおさえた。 「お、何人か悲鳴を上げましたね・・・・・・まあ、悲鳴ぐらいは大目に見ますよ。これから先、キリがないので」 「ロケットランチャーでも壊れない防弾ガラスなんですよ。照明が無いのに教室内が明るいから不思議でしょ。ガラスそのものが発光しているんです。同様にスピーカーもありません。ガラスが振動しているんです。最先端の技術ですよ。NASAが開発したわけじゃなくて、自社の技術です」
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