1日目(教室20)

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「ところで君たち、お腹が空いたでしょ。昨日拉致されてから何も食べていないですもんね。君たちは気づいていないですけど、丸一日経っているんですよ」 「今からうちのスタッフに給食を運んできてもらいます」  ガラスの向こう側に広がる闇の中から、白い化学防護服を着たスタッフの姿がぼんやりと浮かび上がると、ゆっくりと教室に近づいてきた。  顔はスモークのあるゴーグルで覆われ、口元には防毒マスクが付いていた。スタッフはハンバーガーの乗せられたワゴンを押していた。  教室と保健室をつなぐガラスの廊下の横で歩を止めると、首からぶら下がったカードキーをカードリーダーに押し当てた。    廊下の中間付近のガラスがスライドするとスタッフは中に入り、廊下の中央にワゴン車ごとハンバーガーを置いた。スタッフはすぐに外に出て、振り返らずに薄暗い闇の中に戻っていくのだった。 「さあ、ハンバーガーが来ました。食べたい人は挙手してください。私に番号を呼ばれた人だけ、自動ドアが反応して開くようになってます。廊下でゆっくりと立ち食いしてください。食べ終わるまで外には出られません」  生徒たちは腹を空かせていたが、進んで食べに行く者はいなく、周囲の動向に気を配っていた。
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