ケース:佐和子

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薄暗い歩道を駅に向かって歩き出した私たちに会話はない この子いったい何がしたいのだろう? 「ねぇ、見てるだけじゃなかったの?」 唐突に彼に質問すると 彼は小さく「あぁ」と返事し 「いつでも見てるとは言いましたが、触らないとは言ってないでしょう? 少しは僕のことも認識して貰えてるようですし」 ずっと掴んでいた腕の力を緩め するすると手が腕を這い落ちる 指を絡め取り手を繋ぐと、その手をグッと持ち上げ唇を押しつけた 「な、何してんのよ!」 「親愛のキスですよ」と不敵に笑う 「あと一歩かな」 高瀬君は私の目を見つめながらもう一度手に唇を押しつける 「ちょっ……っ!!」 年下のくせに、私より余裕な所がムカつく 「自覚して下さい 佐和子さんは僕の事が好きなんですよ」 「は?」 「ふふっ 早く自覚して下さいね」 軽く笑ったかと思ったら その顔が近づき、スローモーションのようなキスをした 「目は閉じた方がいいですよ」 呆然とする私を小馬鹿にした言い方で 彼は額にもキスを落とした
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