5 リア充は人一倍カロリーを気にしている

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いい天気だ。 ここ最近は気持ちいいくらいの晴天が続いている。ぽかぽかとした陽気も徐々に暑いと感じ始める時期に突入している。 そして、そんな陽気とともに周りの人間もどこか色めきだっているように感じるのもこの時期ならではだろう。夏に向けて恋人を作りたいと考えている人間ならばそろそろ動き始めなければ夏に間に合わないからだ。 例えば、俺のひとつ前の席に座る加藤さんと、俺のひとつ後ろに座る高畠君は最近付き合い始めたらしい。クラスの女子がそんな話をしていることで初めて知ったことだが、そう考えるとこのカップルサンドウィッチ状態はちょっと耐えられない状況である。実際はどうかわからないがきっと2人は間にいる俺の存在を疎ましく思っているであろう。 昼になればきっと2人は机をくっつけて昼食をとりたいはずだ。だから俺は今日も昼食は外で食べようと決心する。 我ながらなんとも素晴らしい気づかいではないか。授業中は俺の存在そのものが邪魔に思えて仕方がないだろうが、せめてひと時でも幸せなカップル空間を楽しむといい。 とか、そんなことを考えながら教室を出ると、同時に例のカップルも教室を出て行ってしまった。 「何をそんなところで突っ立ってるのかしら。こんな狭い廊下で動かないでいるなんて迷惑駐車と同義だと思ったほうがいいわよ」 気持ちの中に火を噴きつけられたような切ない気分で彼らの背中を見送るさみしい背中に追い打ちをかけるような毒を覆いかぶせてくるような人物を俺は2人と知らない。今日も相変わらずの異彩を放つ彼女の頭に乗っているカチューシャがアンバランスに見えて仕方がない。 「辛気臭い顔ね。まるで死んだ魚のような顔よ」 「死んだ魚の目、とかじゃなくて?」 「もはや魚そのものよ」 せめて哺乳類でいさせてくれよ。
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