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九尾
昔、とある村に夫を亡くしたばかりの女がいました。
女の夫は村で門番を勤めていましたが、村に入り込もうとしたモンスターと相打ちになって亡くなってしまいました。
女は悲しみに暮れ、食事も喉を通らない有様でした。
ある日、外から泣き声が聞こえて女は目を覚まし、家の戸を開けると、戸の前には籠に入れられた赤ん坊が置かれていました。
身寄りのない赤ん坊と夫を亡くした我が身が重なって感じられ、女は赤ん坊を引き取ることを決意しました。
しばらくして、女が赤ん坊を背負って散歩をしていると、木陰に少年がうつむき、しゃがみこんでいました。
女がどうしたのか尋ねると、少年は一言、置いて行かれた、とだけ答えました。
その一言で女は察すると、うちにおいで、と少年に手を差し伸べ、女と赤ん坊だけだった家へと帰っていきました。数年後、女が身寄りのない子供を養っているという噂が広まり、女の家には多くの身寄りのない子供が集まって以前からは考えられない賑やかな家へと変わっていました。
暑い日は河で水遊びをして、寒い日には皆で体を寄せ合って暖をとり、退屈な時は、女に内緒でこっそり村の近くの霊峰に忍び込み、女にこっぴどく叱られる。
子供たちが霊峰で見つけた眩く輝く石は女の宝物となり、慌ただしくも穏やかな日々が流れました。
しかし、普段は霊峰を縄張りにするモンスターが山を降りてきて、それに影響されてか、モンスターたちが村へと入り込むことが多くなりました。
女は夫を亡くす切っ掛けとなったモンスターが村に入り込むようになり、毎日を怯えて過ごすようになりました。
それを不憫に思った、女が養う子供の一人が、モンスターを退治するために飛び出していき、無残にも殺されてしまいました。
女は更に嘆き悲しみ、共に女に育てられ、兄弟同然の子を殺された少し年上の女の子は激怒して、こっそり夜中に家を抜け出してモンスターを退治しに出かけてしまいました。
翌朝、村には小型のモンスターと女の子の骸が倒れていました。
以来、村にモンスターが現れる度に、子供たちがモンスターを追い払うために戦いにおもむき、一人、また一人と消えていきました。
女は、その度に死後の安寧を祈る帯を編み、それを常に腰に結び付けるようにしました。
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