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こうして俺たちは再会したわけだった。
開け放たれた窓から、明るい日差しとともに暖かな春風が入って来る部室で、生まれ変わった俺と栢狐は、両手を握り合い長い間見つめ合ったよ。
「会えたな」
「うん、会えた……」
その時、ヤシロの風と匂いが、微かに頬と鼻先に感じられた。微かだが確かに。
美しい少女の姿をしたぬしが、微笑みながらうなずいているような気がした。
そやつと生きてゆくがよい、好きなだけな。
したり顔で顎を撫でまわしながら、そう言っている姿が目に見えるようだ。
そうだ。これからずっとおそらく何十年か先に天寿を全うするまで、俺はこの手を決して離さずに生きて行くだろう。
そして今度こそ、この世に再び生を受けたことの恩返しを全力でする。
ぬしとヤシロの住人たちが、幾度となく傷つき倒れながら、何とかして守ろうとした人や動物の命とこの世界を。
俺たちは二人、手を取り合って守って行くだろう。
きっと巡り合えると信じている、かつての狐穴やヤシロの仲間たちとともに。
これから巡り合うであろう、この現実世界で生きる、同じ思いの無数の人々とともに……。
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