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「神に仕える身ですから、あの手の変態的人種とは相いれないのです」
と、自分ばかり常識人ぶった物言いをしてみせる。そんなところが勇者の鼻につくのだ。神に仕えなくとも特殊性癖でもない限り誰だってその手の人種と相いれたくはないだろう。
どれどれと、なぜか野次馬根性丸出して、ほんの少し開けた扉の隙間から他の仲間たちが中を窺う。
「こりゃまた立派なもんをお持ちで……」
「……なぜ裸なのだ?」
「恥ずかしくないのか?」
「すげえ堂々としてるよな」
「そもそも魔族に羞恥心を求める方が間違ってるだろ」
「……っていうか、なんで魔王一人でおっ立ててんの? あれが通常仕様なのか?」
「……………………………」
またもやなんともいえない沈黙がその場に流れた。
「…………………おまえなぁ、せっかくそこはみんなあえて触れずにいたのにさぁ……」
「あーすまんすまん。気づいてないのかと思って」
「気づくわ阿呆! あんなに激しく自己主張されてたら…!」
「だよなー!」
なぜか全裸の魔王の息子は、中心部分で雄々しくそびえ立っていた。
「あそこも臨戦態勢かよ」
やりにくいことこの上ない。
勇者は仕方なく自分のマントを肩から外し、扉から魔王の方へ丸めたそれを勢いよく放り投げた。そして大きな声で叫ぶ。
「それを腰に巻け!」
再び扉を閉めて待つこと少し。
「馬鹿だな。巻くわけねぇだろ、相手は魔王だぞ?」
「そうですよ。なにを無駄なことをやっているのですか」
「いや、その紳士的な振る舞い。さすがは勇者殿である」
またもや仲間たちから口々に責められ呆れられ褒められる勇者。
「……巻いたぞ」
扉越しに魔王の声らしきものが聞こえ、ぴたりと皆が押し黙った。
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