春染

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「あ、そういや陽彩入試どうだった?」 遼が椅子を近付けて聞いてきた。 入試ー…? んーと…あー。 「特待生制度全部取れたよー」 そうそう、入試満点だったし中学の時もオール5だったから首席で入れたんだよなぁ 「………え」 ぽかーんと呆然とこちらを見る遼。 「ど、どしたの?」 そう聞くと、はっとして遼は我に返った。 「ま、待て…と、特待生?」 「え、うん?」 あー、そういえば特待生制度全部取得できるのは2名までって書いてたなぁ。 全額免除だもんなぁ。 特待生制度は種類があって、自分に合ったものに挑戦できる。 学校側から提示してくれる場合と、自分で挑戦して取得する場合があるが、私の場合は学校側から提示された。 でも、全部じゃなくてもある程度取得出来る人だって居るんじゃないかな? な、なんでこんなに驚かれてるんだろ…? 「この高校の偏差値知ってるのか…?」 「え、わかんない」 即答すると、遼はさらに呆然とした。 偏差値までは全く気にしてなかった…。 でも髪染めてる人多いし、暴走族やらチームやら、”あっち側”の人達も多いからそこまでなんじゃないかなぁ。 いや、偏見か…? 「こ、これが天才ってやつ…?」 考え込んでると、遼が何かをぶつぶつと呟き始めた。 「遼ー…?」 呼び掛けてもうんうんと唸っている。 「戻ってこーい」 ほっぺをむにっと摘むとやっと気付いてくれた。 「遼はどうだったの??」 「俺はギリ通過…」 ほぇー… まぁ確かに変な応用ばっかりだったしなぁ ぽけーっと頬杖を付いていると、クラス内はもうほとんど空っぽになっていた。 その代わり廊下がものすごく騒がしい。 「賑やかだねぇ」 「あー、そうだな。なんか美女がどうのこうのってさっき聞こえたけどそれ目当てじゃねえ?」 美女! えっ!見たい! ぱっと顔を輝かせて遼を見ると、遼は察して笑った。 「行くかっ」
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