春染

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廊下に出ると、とんでもなかった。 人がたくさんな上に男子しか見当たらない…。 遼と一緒にぶつからない様に廊下を進んだ。 辿りついたのは2組だった。 みんな教室内の中までは入らず、外から見ているようだ。 私と遼は教室内に入った。 まず真っ先に目立っていたのは、仁王立ちであちこちを睨み、威嚇していた男の子。 軽く殺気が出てる。 その子の後ろに、心配そうにちらっとこちら側を見てる綺麗な女の子がいる。 私はひらひらと人混みの中を避けながら近付いた。 「噂の子ですか?」 話しかけると番犬君が邪魔をしてくる。 「地味女、何のようだ」 じ、地味女…? 好きでこんな格好してるわけじゃないのに… むっとした私は番犬君をまじまじと見つめる。 「ほほう…。」 私はにっこり笑って番犬君の両ほっぺを強めにつねった。 番犬君の小さな悲鳴が漏れる。 「てめぇ…」 番犬君は殺意の篭った目でこちらを睨む。 今にも殴り掛かってきそうな勢いだった。 「彪牙(ヒュウガ)…もういいからっ」 後ろの女の子が彪牙と呼んだ番犬君の服の裾を引っ張っている。 か、可愛い…。 「この子は女の子だよっ? 私だって友達欲しいの!」 その言葉を聞いた番犬君、彪牙は女の子の方をバッ、と見た。 「た、確かにそうか…」 その子には弱いのか、たじたじとその子の隣の席にどかっと腰を下ろした。 「えと、私は加賀 美璃(カガ ミリ)です」 そう言うと、ぺこりと私に向かってお辞儀をしてくれた美璃ちゃん。 とても美しい顔立ちをしていた。 こんなに注目を浴びるのも納得…。 可愛い…というより綺麗系だなぁ。 けど性格は可愛い…。 「陽彩です。よろしくですです」 にこにこしながら空いていた前の席に座る。 「俺は遼。よろしく」 遼は緊張しているのか、目を合わせずに私の隣の空いてる席に座った。 「あれ、そういえばなんで席こんなに空いてるの?」 しかも美璃ちゃんの周辺だけやけに人がいない。 「えと…彪牙が……」 美璃ちゃんが申し訳なさそうに小さな声で呟いた。 「あぁ…。そこの番犬くん。なるほどなるほど」 番犬君はこちらをギロりと睨んだ。 おぉ、怖い怖い 「彪牙っていうのね、番犬君」
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