春染

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上機嫌で大量のお菓子の入った袋を振り回しながら、廊下をゆっくりスキップする。 「陽彩上機嫌だな」 遼が笑いながら私の隣を歩く。 「3年間楽しく過ごせそう♪」 あんな凄い売店があるなんて知らなかった… ふと、遼が足を止めた。 「あれ、どの階段から来たっけ」 「んー…適当にそこの階段登ってみる?」 一番近くの階段を指さした。 北階段と書いている。 「おー」 階段の壁に貼ってあるポスターや貼り紙を見ながら上っていくと、ある紙が目にとまった。 《屋上解禁!ホールの外には許可が降りない限り、出られません》 「えっ、屋上があるの?」 ぱぁっと目を輝かせ、そのまま階段を登ろうとしていた遼の制服の裾を掴んだ。 「おわっ!ちょっ」 油断していた遼はバランスを崩し、数段落ちた後、私の立っている曲がり角のスペースに着地し、その勢いのままどんっと壁に手をついて何とか体制を保った。 「壁ドン…」 遼は独り言のように呟く。 私は貼り紙を指さして、後ろにいる遼の顔を見上げた。 「お、屋上…?普通屋上なんて行けないんじゃ…」 「なんか、ホールがあるらしいねえ。 行ってみない?」 笑顔で遼の顔をじっと見つめると、遼は何とも言えない顔でバッと離れた。 「わかった。い、行こ」 腕で顔を覆い、遼はそのまま階段を駆け上がった。 私は首を傾げ、その後をついて行った。
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