春染

16/49
前へ
/58ページ
次へ
地図を見ながら、階段を上ったり廊下を走ったりしていると、ようやく屋上への階段に辿り着いた。 「おぉ、わくわくする!」 胸を驚かせながら深呼吸する。 遼はそんな私を見て笑う。 上を見上げると、ドアがある。 遼と一緒に階段を上ると、ドアノブに手をかけた。 「行くよ?」 「おう」 ドアノブを回し、押した。 1歩踏み出して中へ入ると、私は目を見開いて感動した。 とても広く、ゆったりとした空間が広がっており、壁の半分はコンクリートと木造の壁、上半分はガラス張りで出来ていた。 といっても上半分は一定の感覚を置いて木造の柱が立っている。 ドアが幾つかあり、そのドアでホールの外に出られるみたいだ。 「凄い綺麗…」 唖然とその場に立ち尽くす私と、感心して周りを見渡す遼。 座れる椅子やテーブルまである。 生徒はまだ誰1人居なかった。 「……この高校最高」 「…同感」 遼とハイタッチして一緒に椅子に座った。 「おっ、凄い!窓があるっ」 袋をテーブルに置き、窓を開けた。 ゆったりとした爽やかな風がホールの中を満たしていく。 「気持ちいいねえ」 両手で頬杖をついて目を瞑った。 三つ編みされた髪が、風に揺られている。 面倒くさがって切るのを忘れていた長めの前髪が、風に流される。 度が入っていない黒縁の眼鏡越しに、遼を見ると、遼は買ったパンを開けているところだった。 焼きそばこしあんクリームwith唐揚げ…だっけ? 私は軽く身震いして、遼の動作を見ていた。 袋から出して、躊躇いもせず口に突っ込んだ。 「…んー、うま!」 遼はもぐもぐと口を動かしながら笑顔を浮かべると、「いる?」とこちらにそれを差し出してきた。 私は全力で首を振ると、残念そうにまた食べ始める遼。 私は袋から幾つかお菓子を取り出すと、飴を開けて口に放り込んだ。 ストロベリーの甘酸っぱい味が口に広がった。 それだけ口にキープすると、残りを全て袋に戻して手に提げた。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加