春染

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「…oh。頭痛なう」 意識を掴んだ瞬間、頭に痛みが走る。 …なんか、夢を見たんだけどな むくっと体を起こすと、遼のブレザーが落ちてきた。 遼の方を見ると、イスに座ったまま寝ている。 「優しいなぁ」 立ち上がって遼にブレザーをかぶせた。 スマホを見ると、12時10分だった。 私はぐっと大きく伸びをすると、窓に近寄って身を乗り出す。 「…―桜」 さっきは気付かなかったけれど、あちこちで満開の桜が咲いている。 綺麗…。 そういえば、校門にもたくさんの桜の木が満開になっていたなぁ。 「…ん。」 桜の花びらが、私の横髪についた。 それをそっと手でとる。 つまんでじっと見つめると、淡い桃色の桜の花びらが懐かしく感じた。 「…デジャヴ」 自嘲気味に笑って手のひらに乗せ、窓から腕を出す。 花びらは風に吹かれて、空高く舞った。 私はそれを見送って窓を閉める。 それから椅子に座ってお菓子袋から飴を一個取り出すと、ぽいっと口に放り込んだ。 暫く付けっぱなしだったウォークマンで音楽を聞いていると、遼が起きた。 「あー…よく寝た気がする」 遼は伸びながら大きな欠伸をした。 「遼、ブレザーありがと」 お礼を言うと、遼は笑った。 「あ、丁度1時だ。行こうか」 荷物と食べたゴミを持って立つと、遼と一緒に屋上を出た。
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