春染

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ー陽彩sideー 目覚ましが鳴って、目を覚ますと真っ白な天井。 カーテンの隙間から光が漏れ、私の目に直撃し、眩い。 「ふぁ…ねむ」 上半身を起こし、気だるげにぐっと伸びをする。 1度大きな欠伸をすると、ベッドから出て立ち上がった。 ――――――――――――― ―――――― 準備を終え、リビングへ行くと香ばしい匂いがした。 「はよ…」 キッチンの方へ挨拶を投げかけると聞き慣れた声で返事が返ってくる。 「はよ。眠れたか? 朝飯できたから食えー」 ぬぅ、いい匂い… 未だ覚醒しない頭で、テーブルを目指し椅子に座ると、テレビをつけた。 朝の番組が流れている。 時刻は6時32分を差していた。 適当にぼーっと見ていると、朝食がテーブルに運ばれてきた。 「ん。兄貴達はもう行ったから、俺とお前の分な」 寝癖ボサボサ頭の一つ上の兄が、満面の笑みで食事をテーブルに置いてキッチンへ引っ込んだ。 お皿をそれぞれの位置へきちんと置き、湯気が立ってる目玉焼きとベーコンを見つめた。 「向陽(ヒナタ)。醤油ぷりーず」 「あ、掛け忘れてた」 向陽が醤油を持って食卓につくと、二人合わせて手を合わせた。 「いただきます」 相変わらずの美味しさに頬を緩めながらもぐもぐしていると、向陽が険しい顔をしてテレビを見ていることに気付いた。 「どしたん?」 「バイク事故だってよ。 しかも暴走族。高校生のチームらしいな」 向陽が食事する手を止め、テレビを食い入るように見つめる。 「兄貴のチームのやつですかい?」 私はそのままベーコンを食べ、味噌汁を飲んだ。 あったまるー。 わかめ美味し 「いや、そこまでは書いてないけど、多分"鳳凰"じゃねぇかな」 "鳳凰"かぁ。 「あそこ、人数いっぱいいるらしいしね。新人さんかね?」 「知らね。つーか…、陽彩ちゃんと分かってるよな?」 …? なにが? 「陽彩が今日から通う高校、”鳳凰”ばっかだからな」 What? ――向陽の言葉に、私は箸を落としてしまった。
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