春染

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遼と玄関で別れ、とりあえず校内を探検してみる。 人数はさほど多いわけではないと思うんだけど、この高校は大きい。 広いから、地図がないと方向音痴な私はすぐに迷う。 「ん、中庭…?」 東中庭と西中庭というものがある。 「おぉ!いいなぁっ」 私はパンフレットに顔を近づけ、場所を確認した。 ここから一番近いのは東中庭みたいだ。 私はわくわくしながら東中庭へとスキップして行った。 ―――――――――――――― ―――――――――― 「これが…東中庭」 なんというか。 この高校は色々とクオリティが高すぎると思うんだけど…。 唖然と東中庭へと通じるドアの前で立ち尽くす。 ガラス張りで中が見渡せる。 1本の大きな桜の木が中央に聳えていて、その周りにはグリーンルーフが生い茂っている、木で出来たものがあった。 それは木の枝や、自然に生えた植物で出来上がったようなおしゃれな雰囲気のものだった。 屋根があり、壁があり、ツタが巻き付いていて涼し気だ。 ドアを開けて中庭に入り、それに近付いた。 中は光が入って明るく、ゆったりと座れそうな木の椅子があった。 不思議な形で、丸まって寝れそうだ。 「ふぁ…」 寝れそう、なんて考えてしまったおかげで欠伸が出た。 私はその木の椅子の上に寝転んだ。 ツタや木の枝の天井の隙間から光が漏れて少し眩しい。 そのまま、目を瞑って意識を手放した。 スマホのバイブレーションが鳴っているのに気付かずに。
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