春染

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ー慶斗sideー 「…慶斗、"龍虎"達は?」 床で胡座をかいて、頭の後ろで腕を組んだ久呂田 徹(クロダ トオル)が、聞いてきた。 "龍虎"っていうのは全国でトップ3に入る実力を持つ暴走族。 同じくトップ3に入る”鳳凰”と、今は敵対の関係にある。 両方共、近い区域で活動することから、何かと接触が絶えない。 「同じクラスにはいなかったと思う」 携帯を弄りながら返事をする。 ふーん、と反応した徹は、ごろんと床に寝転がった。 「うわ、汚ねぇ」 ソファに座っている彪牙が、驚いていた。 その隣にいる美璃は苦笑いしている。 徹が床に寝転ぶのはここではいつもの事なので2、3年生は驚かない。 俺は留年したから、もう1回1年生だけど。 「…蒼凰」 スマホから顔を上げて、奥の黒いソファに座っている蒼凰の方を見た。 ”鳳凰”の現総長、名嶋 蒼凰(ナシマ アオ) 脚を組み、肘掛けに頬杖をついて静かに目を瞑っている。 ここは空き教室の中の一つで、"鳳凰"の溜まり場。 公認だから、誰かに咎められることはない。 ”鳳凰”のメンバーが報告しに来ることはあるけれど、暗黙の了解として、この教室に入ってくる他人は誰一人いない。 「蒼凰、"龍虎"は来週になるらしい」 そう伝えると、蒼凰は閉じていた目を開けた。 「場所はどこだ」 「海沿いだと思う」 蒼凰は一瞬考え込んだ後、また目を閉じた。 俺もまた携帯に目を移した。
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