春染

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暫くそのまま時間が流れていった。 静寂な教室の中で、大きな欠伸をした徹がふと、声を出した。 「腹減ったから、ジャンケンして負けたやつ誰か売店行って買ってくるっていうのやらね?」 「お、いいな。俺も腹減った」 それにすぐさま彪牙が乗っかかる。 「この場の全員、強制な!蒼凰はそのまま寝ててよし!」 ビシッとそれぞれに指を突きつける。 玲尹はあからさまに嫌なそうな顔をした。 蒼凰寝てないけどね… 俺は苦笑いしながらとりあえずの輪の中に入った。 玲尹は彪牙に引きずられながら強引に入れられた。 「よし、最初はグー。ジャンケンっっ!」 の掛け声で全員それぞれ出した。 「……チッ」 静かに舌打ちした玲尹と、ぼーっと頑張って目を開けようとしている霜崎 叶耶(シモザキ カナヤ)と、そして俺が負けた。 「三人で行くの?」 「おう!行ってこい♪」 徹はにっこりしながらまた寝転がり、みんなにメモを回した。 それに何を買ってきて欲しいか書くらしい。 玲尹は眠かったのか、いつもに増して不機嫌だ。 「ほいっ」 紙を渡され、それを持って三人で教室をでた。 ――――――――――――― ――――――――――― 大きめのビニール袋を、三つみんなで持ち帰ろうとした時。 ふと、玲尹が立ち止まった。 「玲尹?」 「…陽彩?」 玲尹が見つめる先を見ると… 中庭の奥の椅子にくるまって眠っている陽彩らしき姿。 「あ、本当だ」 遠くからでもわかるけど、熟睡してる。 何を思ったのか、玲尹はそのまま中庭の扉を開けて行ってしまった。
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