春染

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あぁぁ…行きたくねぇ… ぐだぐだと重い足を引きずり、玄関についた。 玄関は人がいなく、静かだった。 上靴を脱いで下駄箱に入れた瞬間、ガンっと音が鳴った。 唐突の静寂を切り裂いた音に、少しびっくりして、そちらをみると。 玄関のドアに背を凭れ、腕組をして仁王立ちをしている向陽の姿。 …あぁ、なんか角が見える気がする 靴を履いて向陽のところまで行くと、向陽はくるっと踵を返し先に歩き出す。 「ご、ごめん。中庭で寝てた…」 ここは素直に謝る。 「…次はないからな」 首だけ振り返って睨んできた。 もっと怒られると思っていたから、少し拍子抜け。 口調はまだ荒々しいが…。 「了解です…」 向陽が心配してくれたことくらいわかっている。 …だけどね、うん。 寝ちまったもんは仕方ないね。
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