春染

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それからしばらく朝来た見覚えのある道を歩いていくと、不意に空が暗くなってきた。 空を見上げると、厚い黒い雲が空を覆い始めている。 「雨降りそうだねぇ」 前を歩く向陽に呟いた。 「天気予報外れたな」 確かに今日は一日中晴れの予報だった。 のに、この雲は確実に降るやつだ。 と思った矢先…。 ポツ……ポツ………ポツポツ 「あーー、きやがった。走るぞ」 一気に降り出した雨に、向陽がそう言うと同時に一緒に走り出す。 雨は好きだけど、制服でずぶ濡れは嫌だなぁ 呑気なことを考えながら走り続けると、直ぐに駅に着いた。 駅の近くだったためあまり濡れなかった。 改札を通ってホームへ出ると、電車がちょうどよく滑り込んできた。 「傘ねぇな。コンビニで買うか?」 電車に揺られながら、窓越しに振り続ける街の景色を眺める。 「んーでも通り雨っぽいし、すぐ止むんじゃない?」 風向き的にも、向こうは晴れてるし 向陽は少し考える素振りをしたあと、まぁいいか、と呟いた。 ブー…ブー… バイブレーションに気付いて携帯を開くと、そこには遼の名前が。 そういえば連絡先交換してたんだった。 早いなぁ〜 届いたメッセージを開いてみてみると、 〈寮の同室のやつ、すげぇ良い奴だった…! これから何とかやってけそう ありがとうな。また学校で〉 玄関で別れた時、不安そうだった遼のことを思い出した。 よかったよかった〜 ふっ、っと笑みをこぼして軽く返信を返すと携帯をポケットにいれた。
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