春染

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まだ少し濡れているアスファルトを踏みしめ、いつものスーパーへ歩き出す。 雨上がりの涼し気な風が頬を撫でる。 「あぁ…やっぱり雨は好きだなぁ」 にっこり笑顔で空を見上げる。 綺麗に真っ赤に燃える夕日が、街並みに溶けていく。 私の好きな街だ。 ────────────── ───────────── いつものスーパーまで行くと、何故か明かりが消えていた。 「おっと…まさか……」 嫌な予感がして、入口までいくと…。 張り紙がしてあって…。 《臨時休業》 「ぬぁあ…まじかぁ…」 落胆したと共に、タイミング良く携帯が揺れた。 開いてみてみると、向陽からだった。 〈そういえば一昨日行った時、臨時休業の予定とか書いてたからもし今日あいてなかったら、”龍虎”の拠点近くのとこ行ってこい〉 …何このタイミング……図った…? はぁぁ… ため息をつくとともに、踵を返して”龍虎”拠点方面へ歩き出した。 あっちのお店ちょっと高いんだよなぁー 橋の向こうの商店街に行きたいけど、あっちは”鳳凰”の縄張りだしなぁ。 今日も一応変装してきてるけど、”あっち”のもないし学校用だとしても、私三つ編み面倒くさくてやだしなぁ この街には大きな川があり、その川を架ける橋によって分裂していて、こちら側が”龍虎”、あちら側は”鳳凰”となっている。 ちなみに私達の学校は橋の向こうにあるため、必然的に”鳳凰”のメンバーが多くいる。 私も”あっち”のがあれば橋の向こう行けるんだけどなぁ 今更帰るのもなぁ とかなんとかうだうだ考えながら歩いてると、遠くでバイクの音がする。 方向的に橋の向こう、”鳳凰”かな 特に気にもせず、また歩き出してお店をめざした。
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