春染

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ぶら下げた買い物袋をぶんぶん振り回しながら、棒付きキャンディーを堪能する。 水溜まりを鼻歌交じりに避けながら、ステップを踏んだ。 家に着いて、買ったものを冷蔵庫に全て仕舞うと、またリビングのソファに寝転んだ。 台所からはもう既にいい匂いが漂ってきている。 私は付けっぱなしのテレビを眺めながら、落ちてくるまぶたと格闘する。 「陽彩、今日兄貴帰ってこないから2人で食うぞ」 台所で向陽が食器におかずをよそっている。 私もよっと、ソファを立ち上がると準備を手伝った。 「抗争ー?」 何気なく御飯をつぎながら質問してみる。 「あー、いや違うけど。 ……あ?あれ、そう言えばなんでお前…」 ふと、気付いたように向陽がこっちを見る。 「???」 そんな向陽の様子に首を傾げると、 「いや、”鳳凰”と”月霞”でちょっといざこざがあったって。それの仲裁で”龍虎”が動いてる」 …ふぁ??? ”月霞”とは、私が”あっち”の方で所属している全国No.3を位置取るチーム。 暴走族、っていうほどバイクでぶんぶんはしないから、チームって言う方が正しいな、うん。 「あれ、」 あっ、と気付いて、急いで自分の部屋に戻った。 ガチャ ドアを開いて、机に近付き、引き出しを開ける。 「うわぁ………」 引き出しから携帯をとりだし、開くと… 着信やらメッセージやら……軽く3桁を超えた文字を見て、ため息をつく 忘れてた……。 学校用とあっち用に携帯を使い分けてるからこんなことになるんだよなぁ… 落胆して、とりあえずメッセージを確認する。 「あわぁ…」 内容を確認して、さらにため息をつく。 とりあえずメッセージを返して、服を着替え、カラコンをいれ、ウィッグを被り、1階に降りた。
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