春染

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慶斗side 放課後、倉庫に向かう途中、下っ端から電話が掛かってきた。 『新人が、”月華”の姫にちょっかい掛けて”紫月”と揉めてます!』 「蒼凰」 ため息をついて、信号待ち中に前にいる蒼凰を呼ぶ。 いつもなら面倒事は幹部か、下っ端に任せるのだが、今回はそうもいかない。 場所を聞いて現地に行くと、もはや事態は収拾しつつあった。 しかも何故か叶耶と彪牙の姿が。 「2人なんでここにいるの?」 近付くと、彪牙が不機嫌そうにこっちを向いた。 「雑魚が面倒起こしてた」 最近入ったばかりの奴らは地面に倒れていて、その前には”龍虎”の姿が。 蒼凰は冷めた目で倒れてる奴らを一蹴し、”龍”の前まで進んだ。 「迷惑掛けたな。」 「お前が”鷺”か。初めましてだな」 ”龍”は特に感情も無くそう言う。 総長同士、顔を合わせた事はほとんどない。 あってもお互い遠目からだった。 幹部同士が出会したり下っ端同士の小競り合いはよくある事だが。 「あぁ」 蒼凰は短く返し、顎で合図を出すと、控えてた下っ端数人が即座に倒れてるヤツらを回収した。 さて…状況は良くないけど。 元々最近では”龍虎”と”月霞”と休戦を結ぶ方向だったのだが、悪い方向にいったな…。 「そんな苦虫を噛み潰したような顔すんな。 お前らで解決したんだからとりあえず俺らはなんも言わねぇよ。 だが、次はねぇと思うぞ」 ”龍”は不敵に笑うと、蒼凰から離れ、”虎”になにか話しかけ、その場で会話し始めた。 あぁ、それで叶耶と彪牙がいたのか…。 とりあえずほっと息をついた。 「……あいつ、また携帯放置じゃねぇのか」 「あぁ…”鏡花”来ないね〜」 俺は耳がめちゃくちゃいいため、2人の話してることが容易に聞こえた。 ”鏡花”っていう単語に反応して、そのままなんでもないふりして聞き耳を立てた。 「ったく、”月霞”の事なのになんであいつが1番遅いんだか」 呆れたように笑い合う”龍”と”虎”。 「あ、”水月”が来た。」 その声に、ちらっと横目でそちらを見ると、端正な顔立ちのいかにも好青年そうな男が2人に近づく。 …あれが”水月”か
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