春染

42/49
前へ
/58ページ
次へ
髪は濃い茶髪で、ナチュラルに流している。 右耳に”月霞”特有のピアスを付けていて、若干垂れ目なぶん、優しそうな印象だ。 ”水月”は2人から事情を聞き、こちらを一瞥してから、携帯でどこかに電話をかけ始めた。 きっと”鏡花”にだろう 少しだけ、期待で胸が疼く。 ”鏡花”と言えば滅多に姿を現さず、基本喧嘩自体あまり積極的にしないことから情報が限りなく少ない。 その分、かなり強いとか、外見が化け物だとか、噂だけが散り回っている。 俺も興味はもちろんあるが、俺よりも、蒼凰の方が”鏡花”に思い入れがあるようで。 もしここに”鏡花”が来るなら、休戦を申し入れるチャンスかもな そう思い、蒼凰に近寄って耳打ちする。 蒼凰は少し目を見開いて、”水月”の方を見遣った。 「…そうだな。」 幸い、今回の事は叶耶と彪牙が片付けたみたいだから、恨まれはしないだろう。 だが、若干不利なのは変わらない。 それでも休戦したいのには訳がある。 蒼凰は先に”龍”の方へ行き、話はじめた。 ”龍”は怪訝そうな顔をした後、挑発的ににやりと笑う。 そんな”龍”に蒼凰は無表情で淡々と語っている。 俺は下っ端に指示を出しながら、様子を伺っていた。 暫くして、蒼凰が戻ってきた。 「”龍虎”との話は終わった」 どうやら無事、結べたようだ。 実際、周りでは全国トップの座を争っている、と言われているが、お互い表立った抗争は今まで一切なく、蒼凰自体もトップを狙おうとは考えていなかった。 そしてそれは俺も幹部も同じ。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加