春染

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「あ、”鏡花”から返信きた。 すぐ来るって」 不意に聞こえたその声に、思わずそっちを見た。 ”水月”が携帯を弄っている。 …ということは。 「なぁ」 わくわくが滲んだ声に振り返ると、彪牙が身を乗り出してきた。 「”鏡花”に会えんの?」 彪牙にも今の声が聞こえてたみたいだ。 うずうず、といった感情が顔にもろ出てる。 「多分ね。」 「まじか」 彪牙は柄にもなく緊張してるみたいだ。 地位的には”龍虎”の方が上だが、”月霞”は人数が少なく謎めいた所があり、憧れや人気が高い。 しかもほとんど表には出なく、出ても現れてすぐ消えたり、フードを被っていて顔が見えなかったり、そもそも会える確率はかなり低かったりする。 彪牙も1度だけ”月霞”の、それも”鏡花”を見た事があるらしく、それ以来慕っているようだ。 ……一応まだ敵対関係にある、ということを忘れないで欲しいけどな。 まぁだけど蒼凰に至っては深い事情があるらしく、常日頃から”鏡花”や”月霞”の情報を集めていた。 それが今日、会えるとは。
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