春染

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陽彩side 電話に出ると、俊だった。 「”紫月”、”月華”は?」 『おー。大丈夫。 ”鏡花”は?この後来んの?』 んー、どうしようかなぁ 俊の問いに悩んで、ちらっと真尋の方に視線を向ける。 行きたいけどなぁ…。 真尋はこっちに気がつくと、手話で”おいで”と話した。 私はそれを見て、悩んだ挙句頷いた。 「んー、そうしようかな。 あ、そだ。”鳳凰”とは暫く休戦するから、みんなにも先伝えといて。何かあっても極力喧嘩しないように」 『…はっ?』 電話の向こうの俊が、驚いた顔をしてるのがわかる。 「じゃあまた後でねぇ」 騒がれるのは目に見えてるので、とりあえず電話を切った。 「”龍”ありがと。」 そう告げて、飴玉を”龍”目掛けて1個投げる。 「おー。」 「あ、”鷺”にもあげる。休戦結んだ記念として」 同じように”鷺”の方へポイッと投げると、”鷺”は一瞬躊躇ったあと、キャッチして訝しげにこっちをみた。 にっと笑ってみせてべぇっと舌を出した。 さっき食べ始めたばかりの飴玉がカロンっと心地の良い音を出す。 目を見張った”鷺”を見届けた後、踵を返して真尋と一緒にバイクの方へ歩いていった。
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