宿泊研修

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─────────────── ────────── 『というわけで、私沖縄にしたんだけど、向陽は修学旅行いつなのー?』 メールを打って、帰り道を歩く。 今日は向陽が午前授業だったみたいで、私1人だった。 あの後、私も遼も沖縄にしてそのあとのHRで希望調査の紙を出した。 結果は明日の朝のHRで出ることになっている。 携帯の電源を切ってブレザーのポケットに入れ、首にかけたヘッドフォンを耳につけ直して、また帰り道を歩いた。 「〜♪」 相変わらずださい三つ編みを揺らし、度々落ちてくる伊達眼鏡を上げ、鼻歌を歌いながら歩いていると、とある公園に通りかかった。 こっちはまだ橋の向こうの”鳳凰”の縄張り。 「あ、そういえば、商店街よってこーかな」 公園の先に、こないだ行こうか迷った商店街がある。 通学路の近くにあるなんて、うわぁ〜もっと早く気づけばよかったなぁ〜 ちょうど食材も減ってきてたので、行くことにした。 いつもの生活用品用の共同のお財布もってきてないけど、まぁ自分のでいっか。 お財布の中身を軽く確認して、いざ行こうとすると…。 あれぇ…? よく見たら、公園の草原のところで殴り合いが起きていた。 木も多くて見えづらいし、ここからは車の音とかで気付かなかった。 近道して公園を抜けようとしてたのだが、ぴたりと止まる。 んー… 目を凝らしてじっと見つめると、 「あー、”鳳凰”と、んー……”天狐”??」 ”天狐”は”哭鬼”の一個下。 それでも、正々堂々というものがあるのなら、多分”天狐”の方が上だっただろう。 「ちょっと興味あるなぁ…」 うずうずすれども、見つかった時やばいし… うわぁ…変装道具持ってくればよかった… と後悔したと同時に、 「あ、そういえば持ってたわ…」 昨日学校帰りに”Luna”に寄ろうとして、入れっぱなしだった。 わぁ、ラッキー♪ 今日はついてると思いながら、早速近くのトイレに入って、着替えた。 よしゃあ、完璧。 思い切り”鏡花”のだけど、見つかったらまぁ…通りかかったふうで。 まだやってるかなぁ〜 と元の場所に戻ると、 あ、まだやってた。元気だなぁ 近くの木に上って、上から見る。 この辺の木は丈夫で、樹齢が長いのが多いから、登りやすいし、上の方もしっかりしている。 んー、見えづらい… 「よっ、と…」 ひょいっと飛んで、近くの木に移った。 あー、やっぱり”天狐”だ。 ん…? あれっ、しかも番犬くんじゃん…! 少しびっくりして、”鳳凰”側を見ると、いつにも増して具合悪そうな顔で、息を切らしている。 後ろにいる4人は多分下っ端くんだろう。 そういえば今日も教室で、咳してたなぁ… あれ、しかも早退してなかったっけ? 今にも倒れそうな番犬くんは、4人を庇うように前に出ている。 一方の”天狐”は6人。 んー…あれ、1人幹部? ”天狐”にはそこまで詳しく無い、というかあまり調べたこともなかったから、よく覚えてないけど… 通り名なんだったか… 「奏さん、”紫狼”なかなか懲りないですね」 奏…あー、天城 奏(テンジョウ カナデ)っていたなぁ たぶん”紫狼”というのは番犬くんの通り名なんだろう。 「うーん、そうだね…。これ以上やってもなぁ」 「黙れ……優男、最後までやれや…」 肩で息をしながら、それでも睨む番犬くん。 こんな状況でも引かずに戦おうとする姿に、ふっ、と思わず笑った。 にしても、顔赤いし、多分熱あるな、あれ。
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