宿泊研修

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”鳳凰”の倉庫はかなり騒がしかった。 倉庫の前ではバイクの整備をしてるのが大半だ。 知ってる顔いないかな、と思い、近付きながら見渡すが、やはりいない…。 とりあえず近くまで行った。 と、途端に注目を浴び、一気にざわめきが起こった。 「なぁ、ちょっと部屋かなんかない?」 近くの人に聞くと、フリーズしたように固まってしまって…。 えぇ…? 「俺は今は敵じゃないから。」 敵じゃないアピールをしてみるも、かなり動揺してるのか、口をぱくぱくしたりで話が通じそうにない。 そんな時、あまりの騒がしさに出てきたのか、慶斗が倉庫からでてきた。 あー…呼びたいけど通り名わからん… そう思ったのもつかの間、慶斗は番犬くんと私を見つけると、駆け寄ってきた。 「え、”鏡花”!????彪雅…どうし…」 「この子、熱凄い。とりあえずちょっと横にさせられる所ない?」 明らかに動揺している慶斗。 「わかった。とりあえずこっち…」 ちらっと、焦りの滲む顔で番犬くんの顔を見たあと、倉庫に向かって歩き出した。 連れてこられた所で、とりあえずソファに横にさせた。 玲尹とか”鷺”とかがいる部屋とはまた別のところらしく、人気がない。 鞄からさっき買ったものを全部出して、近くのテーブルに置いた。 「体温計あったりする?」 ダメもとで聞いてみるけれど、やはり慶斗は首を振った。 「だよねぇ。とりあえず冷えピタ」 箱から取り出してそっとおでこにくっつける。 番犬くんはぴくっと瞼をゆらしたが、苦しげに眠っている。 タオルで汗を拭いて、とりあえず鞄から風邪薬を取りだし、水の近くに置く。 それから未だ状況を掴むのに混乱している慶斗に向き合った。 そして軽くことの成り行きを説明すると、頭を下げられた。 「ありがとうございます。うちの馬鹿を止めて介抱してくれて」 「いーから、それやめて…」 ぶんぶんと手を振って顔を上げさせた。 「そういえば、ゼリーとかプリンとかも買ったんだけど、”紫狼”ってアレルギーある?」 「いや。ない…よ。」 どこか緊張したような、雰囲気の慶斗。 と、そこに、外の方に気配が集まってきた。 「あー、俺そろそろ帰るか。。 それ、風邪薬だから、もし無かったら飲ませてやってね。んじゃ」 そう行って、ドアとは逆の窓を開けて、慶斗に手を振ると、そのまま外に飛び出した。 と同時に、後ろでドアが開く音がして、 「え、待っ…」 ちらっと後ろを見ると、やっぱり玲尹とか”鷺”とか幹部が入ってくるところだった。 危ない危ない〜 ちょうど窓の外は建物の裏だったみたいで、先程みたいに下っ端さん達はいなく静かだった。 私はそのまま帰り道を急いだ。 「あー、やばい。連絡してないから怒られるや」
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