春染

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教室から先生が出て行くと、一気に教室内が五月蝿くなった。 周りにはやはり男子しかいない。 ……髪染まってるけど、大丈夫なのか… 隣の男子をちらっと見ると、茶髪だった。 まさか、地毛? 校則わかんないなぁ… 時計をちらっと見ると、まだ9時だった。 …ひ、ひま。 「ねぇねぇ」 とりあえず前の人の背中をつんつんする。 「…なに」 不機嫌そうに振り返った、黒髪のストレートの髪の男の子。 「陽彩と申しますが、暇なので友達になって下さい」 話し掛けると、男の子は怪訝そうな顔をした。 「…葉山 玲尹(ハヤマ レイ)」 「よろしくですです」 名乗ってくれたことが嬉しくて、自然と笑顔になる。 玲尹は後ろを振り向いたままでいてくれてる。 「ねぇねぇ、あのさ。 不公平だと思うんだよ」 「なにが?」 玲尹が私の机に頬杖をついて横目で話を聞いてくれる。 「だってね?私は窓側の席。 でも他の女の子は全員廊下側…。 不公平じゃない?寂しすぎるー……」 ぐでーんと机に乗っかかり、腕を伸ばすと玲尹に軽くぶつかる。 「…」 玲尹は廊下側をちらっと見て、またこっちをみた。 「いいなぁ。席替えしないのかなぁ」 「しばらくこの席に慣れたらじゃない?」 いつの間にか斜め前の席の人もこちらを向いていて話に参加していた。 えぇ…。 更にどんよりとすると、玲尹がじっとこっちを見ている。 「ねぇねぇ。そう思わないですか」 携帯を弄っている隣の茶髪の人にも話を振った。 突然話しかけられた男子は、少しびっくりしたように目を開いた。 「…女子が周りにいないこと?」 「うん!」 話は多少聞こえていたらしい。 「あー、うん。逆に凄いよね」 携帯の電源を切って、こっちを向いてくれた。 人懐っこい笑顔。 「えと陽彩でいいの?」 「うん。あなたは?」 「七瀬 慶斗(ナナセ ケイト)。」 無表情な玲尹と対称的に、にこにこ笑顔の慶斗。 「よろしくね。あなたは?」 斜め前の席の子に目を向けると、にっと笑顔を浮かべた。 「俺は中野 遼(ナカノ リョウ)」 「よろしくね」 焦げ茶色の髪の男の子は幼い笑みを浮かべている。
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